発生工学の研究は、こんなところで活用されます
アニマル・バイオテクノロジーの基盤技術である発生工学は、農業・薬品・医療など様々な分野に活用されています。
死亡した野生動物から精子や卵子を回収して、凍結保存することで、遺伝資源の保全を図ることができます。
個体数の減少した野生動物の子供を、近縁種の雌を借り腹とする胚移植技術を利用して増殖することも可能です。
突然変異動物、貴重な実験動物、遺伝子組換え動物などの精子や卵の保存によって、人類共有の生物資源が形成されます。
体外受精や顕微受精によって、受精の障害が克服されます。
放射線治療を受ける女性が卵を一時的に保存することによって、治療後の妊娠への道が開かれます。
老化卵子の若返り処置によって、高齢出産のリスクが回避されます。
精子や卵の凍結保存、人工授精、胚移植などの技術は、盲導犬、救助犬、警察犬などの育種や維持に大きく役立ちます。
精子や卵の凍結保存によって、犬や猫の多様性を、時代の流行の影響を受ける事なく、半永久的に保全することができます。
当研究室では、クローンネコ胚のガラス化保存に成功しました。
胚移植技術によって、優良家畜の短期間での増殖が可能になります。
体外受精や顕微受精は、稀少品種など、特殊な家畜の繁殖を助けます。
生殖細胞(卵子、精子、胚)の凍結保存によって、人類の長い歴史の中で育種改良された多くの品種を、将来に伝えることができます。同時に、世界中の様々な国や地域に存在する、固有品種の保全も可能になります。
凍結精子や卵の国際的輸送により、優良な家畜の遺伝子を世界中に迅速に拡げることができます。
遺伝子改変動物を利用して、移植用の組織や臓器の生産が可能です。
ヒトの病気を研究するための特殊な病態モデル動物を作るためには発生工学技術が不可欠です。
遺伝子構成が一卵性双生子のように等しい個体の集団というクローン動物の特性を活かして、臓器移植や幹細胞移植の研究を進めることができます。
生殖細胞の培養や操作技術は、臓器や組織の再生の研究へと応用されます。
薬品原料になる高機能物質(生理活性物質)を、遺伝子組換え動物の乳・組織・血中などに生産させ利用することができます。
クローン胚の凍結保存と解凍後移植によるクローン作出が可能なことによって、希少動物種の保存が長期間にわたって可能になります。ブタは、元々世界中に数百種類の品種があったといわれていますが、家畜の領域で長年にわたり品種改良によって様々な交配が行われ、オリジナルの種の遺伝資源というのを保存するのが困難になっています。このような経済性理由のために、品種の多様性が急速に失われています。
これを保存するために、クローン技術と受精卵凍結保存技術を利用することが可能です。受精卵を凍結保存しておけば、借り腹につかうブタはありふれた肉用のブタで、作出することができます。その一環で、中国雲南農業大学が保持している バンナミニブタのクローニング研究に協力しています(長嶋が客員教授として協力) さらに、本来自然界に存在したブタの品種(在来種)と同様に、人的に育種してきた人工的な品種も重要と考えられます。その時代時代によって、人間の嗜好が変化するとともに好みの肉種も変化するので、品種が加工されていき、きちんと保存していかないと後になって大事な形質が失われていってしまいかねません。胚凍結保存によって、ワインのように特定の年代の肉製品・乳製品の味というのを保存できるようになります。
この取り組みとして、高級ブランドブタである Tokyo-X( 東京都農林総合研究センターが開発)の保存にも取り組んでいます。